こんにちは。たかすぎ(@techbaum2020)です。
記念すべき第一回目ということで、今回は石川達三の「四十八歳の抵抗」を紹介していきたいと思います。
この作品は1955年から1956年にかけて読売新聞に掲載され、作品名が流行語にもなったそうです。
目次
石川達三について
石川達三(1905~1985)は昭和の社会派の小説家です。誰もが知っている小説家、というわけではありませんが、1935年の第一回芥川賞の受賞者でもあります。芥川龍之介に憧れていた太宰治は第一回の芥川賞に相当固執していたそうですが、それを退けて、石川達三自身がブラジルへ移民として渡った時の経験をもとに書いた「蒼氓」という作品で芥川賞を受賞しています。また、恋愛をテーマとした作品も多く書いています。
作品のあらすじ
まだ五十五歳で定年退職だった時代に、定年間近までサラリーマンとして保険会社に誠実に勤め、妻と娘のいる恵まれた家庭を築きあげてきた、次長西村耕太郎。
特に不自由のない生活を送っているが妾を持てるほどの給料はなく、自分は数年後に定年退職して、後は何も刺激のない余生を送ることになるという焦りからか、心の奥底にある今まで満たされていなかったものを埋めるための何かを求め始める。
そんな西村耕太郎に舞い込む会社の後輩達からのヌード撮影会、怪しいバーへの誘い。そこで出会ったとある娘に対する熱情。仕事にも家庭にも真面目に向き合ってきた男の最後の青春を描いた小説です。
感想
20年以上真面目に会社勤めをしてきた中年サラリーマンの細やかな心理描写が秀逸でとても面白い作品でした。
西村は恋愛結婚がまだ一般的でなかった時代の風潮にそのまま従って結婚したのですが、そんな西村の、一人の男として枯れ果てる前に最後の青春として恋愛をしてみたいという欲望は、男性なら理解できると思います。
気分爽快に読める類の小説ではないですが、老いていくしかない四十八歳の最後の抵抗を感じて、安定した家庭を築いて大黒柱として支えていきながらも、何かしらの刺激に対する欲望を抑えられなくなったときに、自分だったらどう折り合いをつけるか、そういうことを考えさせられる作品でした。
若いうちに沢山遊んでおいて、歳をとった時にこういった欲望をを抱かずにいられるようにすべきなのかもしれないと思いながらも、それでいて男には欲望が湧いてくるものだと開き直ってしまう気もします。
まあ、男女関係や男女の役割に関する考え方は、当時と今とでは全く変わってきてはいるんですけどね…
余談
僕はこれ以前にも石川達三の作品を何冊か読んでいます。
一番最初に読んだのは「青春の蹉跌」という小説でした。この小説に出会った頃の僕は「青春」という言葉に敏感で、タイトルに「青春」とつく小説を調べていて、「青春の蹉跌」にたどり着いたわけです。
この「青春の蹉跌」が面白かったので石川達三の作品を少し読むようになりました。今回もその一環です。この作品についてはまた別の機会の紹介したいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。m(__)m
またお会いしましょう。